“新井 素子” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

キーワード:新井 素子 (32 件 / 4 ページ)

ライトノベル読みにキーワードで勧める「新井素子」初めの1冊

「グリーンレクイエム」「ひとめあなたに…」が復刊された話をしていたら、ついったーで「“新井素子初心者に薦める 1 冊目”とかないですか」と話をふられたので、調子に乗ってライトノベル好きで新井素子初心者な貴方に勧める1冊目をラノベラーが反応してくれそうなキーワード別でまとめてみました。このキーワードに脊髄反射できるなら読め!な1冊です。興味がわいたら是非どうぞ。

【読む前に注意!】
あくまで私が読んだ中でオススメの1冊目です。全著作はカバーしてません。
・ところどころ1冊じゃないかもしれません。
・絶版書が殆どなので、見つからなかったら古本屋か図書館で探しましょう。
 殆どの作品が100円コーナーとかで投売りされてるので、お財布に優しいです。
 え?新書じゃなきゃ駄目だって?そんな貴方は頼みコムといいよ
・ヤンデレにやたら気合が入っているのは私の所為じゃない。と思う。


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もいちどあなたにあいたいな

 

なんだか変!いったい何が起きてるの?大好きな和おばさんは、愛娘を亡くして大きなショックを受けているはず、だからあたしが力づけなくちゃ。でも、それにしても。―何かがおかしい。澪湖は、その謎を探り始める。失われた記憶と、関係のなかで醸成され増幅される呪詛…著者ならではの軽妙な文体でつづる濃密な物語。 (「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

やっとの思いで生んだ子供を亡くしたばかりの和(やまと)の様子がどうもおかしい。小さな違いが積み重なって、どうしても「別人ではないか」という正体不明な不安がぬぐえなくなって……という些細な疑念つきをきっかけに、彼女の姪である澪湖が少しずつ彼女の過去と謎に迫っていくお話。

和を「やまとばちゃん」と呼んで慕う澪湖のほか、和の兄であり澪湖の父親でもある大介、母親の陽湖、という3人それぞれの視点から物語が描かれていき、その3人それぞれが和を支点にして全く違った想いを抱いているのが印象的。序盤の澪湖の思考展開はかの「おしまいの日」を思い出させるものがあって「またそっちのルートか!?」とビクビクした新井素子好きは私だけではないはず。

ちょっぴり不気味で不穏な雰囲気が漂う中、唯一の癒しだったのが澪湖の相談相手であり本作の『探偵役』であり、自称「オタク」の木塚君でした。何かと暴走しがちな澪湖を上手くいなしつつも否定せず、オタクならではの(?)中二病あふれるぶっ飛んだ意見を展開する彼の姿が頼もしい。正直途中から物語り本線よりも木塚君のイケメンっぷりが気になってしかたありませんでした。ていうか明らかにそれを「オタクだから」で片付けてしまうのは惜しい程の超ハイスペック+眼鏡を取るとイケメンってどういうことだ木塚君結婚してください。

正直、他の新井作品と比べてしまうとどうもパンチが弱いというか……微妙に物足りなかったかも。この手の新井作品が持つ共通の「黒さ」とか「救われなさ」みたいな何かが、本作の「探偵役」にしてヒーロー的役割を果たした木塚君の登場によって打ち消されてしまっているみたいな気が。終盤で明かされた和の正体と彼女の「不幸」には驚きましたが……。


ディアナ・ディア・ディアス

[著]新井 素子

南の国は、代々“高貴なる”ディアの純血を持つ人間のみによって統治されている。その血は気高く、同時にその血を持つ者を狂気に陥らせる呪われた血でもある。しかし、純血の跡継ぎが居ないまま暫定の王が立ち、そのカイオス王の治世が長く続いていた頃、カトゥサは兄であるリュドーサの死にり、ムール将軍家の後継者としての道を歩きはじめる。彼は純血のディアの男“ディアス”であり、“運命”は彼を巡って動き始めていた…
   個人的お気に入り度数
「扉を開けて」と世界観を共有するファンタジー小説。「扉を?」は世界の真ん中にある中つ国を舞台にしていますが、こちらは南の国が舞台となっています。あちらと同じような少女漫画系異世界ファンタジーかと思いきや、こちらは神である“ディア”である血を受け継いだものの出世とは無縁な大神官を目指していたカトゥサが兄・リュドーサの死を転機に稀代の王への道を歩み始める…という戦記系極太ファンタジー…というのはタテマエで、本線は呪われた血を持つ母・ディアナの半世を辿りながらディアナとディアス(カトゥサ)と、彼らを巡る人々が織り成す様々な“狂気”を描く壮大な「ヤンデレファンタジー」です。

明晰な頭脳とは裏腹に狂気を併せ持つディアの血を引く主人公のカトゥサと母・ディアナの歪みに歪んだ母子関係も病みまくってますが、王としては優秀だけどある凶念を併せ持ち、皇女であったディアナを追い詰める現王・カイオスの狂気も相当なもの。また、母子に使える侍女の親子、パミュラとプシケの献身的な姿も解釈によっては狂気に見えてきたりするのがまた…。

あらすじを読むとカトゥサの立身出世の物語のように思えますが、メインはあくまで母・ディアナの半生にあると思います。その為、戦記ファンタジー的なものを期待すると痛い目見るかも。王女であったディアナがいかにして自らその位を退き、一介の将軍であるムール将軍の下へ嫁ぐ事になるのか、リュドーサの弟であるはずのカトゥサが何故ディアの純血の長男にしか与えられない“ディアス”という名で呼ばれるのか。そして、血に翻弄されて最後まで哀しい人生を歩んだ女性・ディアナの半生の物語。正直、カトゥサ側の物語もディアナの“その後”を描く為の壮大な伏線に思えてなりません。あのエンディングはカトゥサがディアの“狂気”を孕んでいく様子を描いていなければ、意味不明のまま終わったものだったでしょうから。

頭でっかちな母子と侍女コンビのやり取りがメインとなるので、他の新井作品に比べて少々読みづらいなあという印象も受けましたが、新井素子の“狂気分”を補給するにはとても良い物語でした。ヤンデレ好きは読んで損は無いと思います!


くますけと一緒に

[著]新井 素子

小学生四年生の成美は、未だにぬいぐるみが手放せないちょっと「普通じゃない」女の子。両親を交通事故で喪い、母の親友だった裕子さんの家に引き取られる事になったが、彼女には1つだけ不安があった。それは、ぬいぐるみの「くますけ」が両親を殺した「悪いぬいぐるみ」なんじゃないかということで……
   個人的お気に入り度数
久しぶりに再読。初読は中学校低学年の頃で、私にとっての初新井素子作品。
(実際に持っているのは新潮文庫版ですが、書影があるので徳間版で…)

両親の愛に恵まれなかった所為で片時もぬいぐるみの「くますけ」を手放せなくて、ぬいぐるみと会話をしてしまうような女の子が、引き取られた家で少しずつ子供らしさを取り戻していく。しかし、死んでしまった両親の幽霊が夜な夜な彼女を苦しめて……というお話。中学時代に始めて読んだとき、主人公である成美に全く共感できず、彼女の電波的な部分ばかりが不気味な印象を残していたのだけど、そう感じられた中学時代の自分は物凄く家族に恵まれていたんだなあ。今読むと成美の異常性よりも「子育ての難しさ」とか「親から子供への愛情の大切さ」そういうものの方が印象に残る。

裕子さんが懸命に成美に「外で遊ぶ楽しさ」を教えようとしたり、成美に言われて仕方なく成美を引き取った晃一が少しずつ考えを変えて一生懸命彼女と触れ合おうとする、血は繋がっていないけれど少しずつ「親子」になっていく3人の姿が微笑ましいのに対して、成美が囚われてしまう「本当の両親」とのシーンはとにかく不気味で暗くて重い。母親の形見のネックレスに拘束されたくますけ、という悪夢の中の描写が得体の知れないこの「悪夢」の不気味さを端的に現しているように感じました。

何はともあれ彼女が悪夢から解放され、3人が本当の「親子」としての生活を送り始めてめでたしめでたし……と思いきや、エピローグで冷水ぶっかけられます。最後の最後で物凄いオチが貴方を待ってます。ぬいぐるみつええ。


これは決して「ヤンデレ幼女」の話ではない。
「ヤンぬいぐるみデレ」の物語である。


窓のあちら側

オンライン書店ビーケーワン:窓のあちら側窓のあちら側
新井 素子著
出版芸術社(2007.2)
「色」をテーマにした短編+αを収録した、新井素子さんの自選短編集です。
半分以上は読んだ事の無い作品だったので、久しぶりに堪能させていただきました。読んだ事のある作品も懐かしい気分で、心新たに読めて面白かった。

「グリーン・レクイエム」

小さい頃、嶋村信彦は緑の髪を持つ少女に出会う。彼女のことが忘れられずに大学で植物学を学んでいた彼は、あの時であった少女にそっくりな瓜二つな女の子・明日香に出会うが…

コミックや映画にもなった、新井さんの代表作ともいえる作品で、緑の髪で光合成をすることが出来る少女・明日香と植物学を学ぶ信彦の恋物語。中盤の逃避行シーンが非常に好きでした。本当にページ数的には短い場面なのですが…二人のワクワクしている気持ちが伝わってきて、また、2回目以降はその後に待ち受けている悲劇を思うと切なくなる。

個人的にはこれの続編に当たる「緑幻想」が非常に好きだったりします。中学時代に散々読み返した作品のうちの1つで、凄く思い入れの深い作品。

「ネプチューン」

過剰な開発によって汚く淀んだ海に囲まれる“ネプチューン”の海で、3人の学生達は謎の少女を助けた。言語を介せず、まるで人魚姫のような美しい少女は「ネプチューン」と名づけられ、3人に保護される。しかし怪しい奴らがネプチューンを狙い始めて…!?

海を綺麗にしたいと願う洋介、いつの日か遠くに—宇宙に行きたいと願う正行、二人の間で揺れる由布子…という3人の学生の所に不思議な少女が現れて四角関係の泥沼になる話…というのはちょっと端折りすぎですが(笑)

彼らの想いが人間の本能を形作り、それが現在の進化に繋がる…というラストは途方もなく大きな話になってしまいますが、個人的に心に残ったのはやはり4人の織り成す四角関係。ラストの由布子の姿はちょっと薄ら寒いものがありましたが…

なんというか、全体的に洋介があまりにも不憫すぎると思うのは目の錯覚ですか。

「雨の降る星、遠い夢」

家出をして火星のやっかいごと引き受け事務所に勤めるあゆみは、いつまでも仕事をもらえないことにふてくされ、所員の出払った事務所で留守番中。ところが、ひょんなことからお隣りに住んでいる礼子さんのごたごたに巻き込まれた。『きりん草』に取り憑かれてしまった礼子さんのフィアンセを、あゆみは助ける事が出来るのか…!?

『星へ行く船』シリーズ第二段。実はこのシリーズ未読なんですよね…読んでおけばよかった。第一作を読んでいないので一部設定がイマイチつかめなかったりで最初はちょっと読みづらかったのですが中盤以降はいつも通り楽しむ事が出来た。後書きによるとこの短編のイメージは『黄色』だそうですが、そのまんま黄色のイメージが濃厚で、後書きを読んだ時「なるほどなあ…」と思いました。

そしてちょっとしか出てきませんが、太一郎さんがかっこよすぎです。「ブラックキャット」の山崎ひろふみの子孫だかなんだか…と聞いた気がするのでもっとヘタレっぽい人物を想像してました(笑)

「一月 — 雪」
「八月 — 蝉」
「十二月 — 夜」
「季節のお話」に収録されたショートショート3編。
珍しく三人称で、童話っぽいお話です。読んでると非常に和める3編。「十二月 夜」の夜の神様が偉い可愛らしくて、かなり気に入ってます。いや、だって想像すると凄い可愛いんですもん、神様(笑)

そういえば「季節のお話」も未読です。今度読んでみよう…

「眠い、ねむぅい、由紀子」

金持ちの父親が裏口入学させようとするのを断固拒否して、自分の力で大学受験に挑もうとする由紀子。ところが近頃、眠くてしょうがない。それなのに何故か成績は上がっていって…!?

めでたしめでたしなお話かと思いきや、ラストでとんでもない手痛いしっぺ返しを食らいました。でもなんかこういうオチでこそ新井素子という感じがしなくもないですが(笑)色々と素子さん中毒な私。

「影絵の街にて」

奇妙な老人から時計を託された久子。その時計はなんと時間を操れるというシロモノで、最初は喜び勇んで時計を使っていた久子だが…

1日が100時間欲しいと常に願っている私には、身につまされる話でした。こんな時計が無くても時間がもったいない?、もったいない?。って常に思っている私です。もう少し心に余裕を持とうと思いました。

なんか色々と引き伸ばして書いたら電撃文庫とかでも行けそうなストーリーでした。というか漫画化したことがあるそうで、漫画版読んでみたいなあ。

「大きなくすの木の下で」

夫はなかなか出世せず、息子はドン臭い…日常に不満だらけの恭子。そんな彼女の元に、謎の悪魔?が現れ、願いを叶えてくれると言い出すのだが…?

あ?なんかこれも身につまされるなあ…。今までの失敗だらけの人生を特にリスクもなくやり直させてくれるって言われたら?ってお話。こういうのに引っかからないよう、もっと色々と後悔しないように人生を生きたいと思います(笑)


ひとめあなたに…

[著]新井 素子

1週間後、巨大隕石が地球に衝突して地球が滅亡するというニュースが流れる。地球最後の一週間、電車も止まり無法者が横行する狂乱の中…「あたし」こと圭子はひとめ逢いたいと江古田から鎌倉の恋人の家まで歩いていくことを決意するのだが…
 

巨大隕石がどうの人類滅亡がどうのというとハリウッドばりのパニック小説を想像してしまいそうですが、その人類最期の一週間の人間達の心理を描いたラブストーリーです。人類を滅亡から救う為に正義の味方がいっくぞーとかその幻想を打ち砕くとかそういう話ではありません(笑)

とりあえず「チャイニーズスープ」最強って感じなのですが。甲田学人さんの作品のような描写的肉体的なグロさではなく、心理的なグロとでもいうのか…。鼻歌交じりに自分の旦那を解体して煮込んじゃうシーンの印象が強すぎて何度読んでも他の話が印象に残らない(笑)

読んだ直後だとチャイニーズスープよりも「走る少女」の方が印象に残ってるんだけどな。誰もが自分達の運命を悲観する中「あたし、幸せよ」といって死んでいった少女の姿が妙に綺麗に思えた。

どこか狂ってるけど儚くて綺麗な物語。
季節も夏なのでこの機会に推してみますよ!


ハッピー・バースディ


[著]新井 素子 
チグリスとユーフラテスが最新作だと思ってたんですが、アマゾンで検索したらこんなん発見して速攻取り寄せ。ライトノベル新刊も貯めてるけど、こっちを読むほうが先決だわ!!と読んでしまいました(笑)

ところで、新井さんの「夫に依存している妻」の描写って、何か昔に嫌な思いででもあるのかってくらい嫌な書かれ方してると思うんですが…。夫が帰ってこなくてデンパってく妻(おしまいの日)とか、夫が恋しい余りシチューにしちゃう妻(ひとめあなたに…)とか。

今回の話では夫に依存している奥さんである、あきらが主人公。
ストーカー寸前ともいえる「悪戯電話」攻撃が原因で少しずつ精神バランスをおかしくしていきます。小説家として大成して、幸せの絶頂期に居たあきらの元に時々やってくる、「いい気になるなよ」という趣旨の電話。実はそれは近所に住む、彼女を良く思わない浪人生・裕人の仕業なんですが、当然そんなこと気づかない。

…と、ここまではありがちな「ストーカー」の物語なのですが。

とある不幸により精神崩壊を起こしたあきらが、その不幸の原因を裕人に責任転嫁して逆ストーカーを開始。そんな昔のちょっとしたウサ晴らしのことなんぞすっかり忘れて大学にも合格して幸せの絶頂に居た裕人。

ある日彼が受けた一本の電話から「いい気になるなよ」という、昔の自分の声が聞こえてくる…。

とにかく、この辺が非常に怖いです。あきらの執念深さ、女の粘着質な姿がありありと描かれます。彼女は裕人の20歳の誕生日にとっておきの仕返しをしようと計画を練るのですが、その復讐計画もまさに女の怨念どろどろ。

個人的に一番怖かったのはエンディング。
新井さんの小説って時々ぞっとする恐怖が最後に来るんですけどこう「あ、ハッピーエンドで、全部収まってよかったな?」と思ってるとアンパーンチ喰らうという(古)読後感はぞっとしたまま終わってしまうのであんまりよくないです。新井さんはこの手のタイプのキャラクターには最後まで手厳しい…。

とりあえず、ハッピーエンドが好きな人にはオススメ出来ません。
一応精神崩壊からあきらは戻ってきますが…戻ってきたと言っていいんだろうか?これは。女の執念が怖いという事がありありと描写されてて、非常に怖い一作に仕上がってます。男の人はこれを読んで女の子に対する認識を改めてみてもいいかもしれませんよ?



…ふふふっ。


あなたにここにいて欲しい

[著]新井 素子

真美と祥子はどんなことでもツーカーでわかってしまう、特別な仲。しかし、ある日一人の女性・藤原綾子とであった祥子は何かに怯えるようになり、ついに真美の前から姿を消してしまう。真美は綾子の主治医であるという男性・宇野と共に祥子を追いかけるが…
   個人的お気に入り度数
この本を読んでると、本当にこの方の本は私の好みが集約されてるというか、なんというかな気分になります(笑)「テレパス」に「もう一人のわたし」、ついでに微鬱なストーリー展開とか。

超能力モノなんですが、女の子たちが超能力を持って華麗に戦う、的ストーリーでは勿論ありません。主人公・真美の親友の祥子は念動力で自分の家を燃やしてしまった過去を持つ、恐ろしいほどの人見知りで世間知らず。相対する綾子は人が30人も居るところに出れば気絶してしまうテレパシスト。「ブラックキャット」もそうでしたが、新井さん独特の弾けたキャラ設定がなんとも素敵。

中学時代に初めてこの本を読んだ時、印象に残ったのは何よりもこの本でのテレパスの描写です。今までSF漫画とか読んで「便利だな」とか「私もテレパシストになりたい」なんて思う人、結構居るんじゃないでしょうか。

この本を読むと「テレパシストってなんて可哀想なんだろう、怖いんだろう」って思えると思います。同じ空間に人が30人も居れば30人の思考が勝手に頭に入ってきて、気絶してしまう。口に出せないような汚い気持ちも、全て読めてしまう。考えてみればこんなに怖いことってないですよね。

私のSF小説とか超能力漫画を読むときの考え方を根本から変えてしまった本と言ってもいい。

そして現在読み返してみると印象に残るのは、こっちよりも真美と祥子の親友としての関係でした。今まで喧嘩もせず、ピッタリ息があってる関係って、仲の良いときはそれでいいんだけど一歩歯車が狂うと同属嫌悪陥って修復不可能になる事が多いんでうよね。
それを乗り越えたらきっと最高の親友になれるはず。二人の詳しい関係を話すと完全なEDネタバレになるので伏せますがラストで二人がまた親友として会話するシーンには目頭が熱くなりました。

ストーリーの軸になる言葉、「あなたにここにいて欲しい」。
これが一度だけ「あなたにここにいて欲しかった」になる場面があって
凄く心に響いたシーンでした。痛いというかなんというか…。
中学時代に読んだっきりの話なのに、この一行が一番心に残ってた。

愛って、憎しみって、友情ってなんだろう?って考えさせる作品。
でもちゃんとエンディングではハッピーエンドで、嬉しかったなあ。多少ご都合主義なところあるけども。


最後に。巧さんがかなり好み(笑)


ブラック・キャットI

4086106302ブラックキャット (1)
[著]新井 素子 [表紙]石関 詠子 [絵]山崎 博海
集英社 1984-01

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某ジャンプの萌え漫画ではないのであしからず(笑)

調べてみたらこのシリーズ、10年ぶりの新刊発行なんですよ。
通常の本も私が高校生時代に出た「チグリスとユーフラテス」が最後で止まってて
新潮とかだと既に概巻が軒並み絶版状態になり・・・
そんな状態で文庫が平積みになっていたので喜び勇んで買ってきてしまいました。

それで、第一巻。表題作「ブラックキャット」と短編が数作収録。
挿絵は今の新潮文庫みたいな感じの絵で、今のライトノベルからは一線画した感じ(3巻で挿絵変わりますが)
それもそのはず。この本って初版20年前なんですよねえ。そりゃ古く感じるはずだ。
ご当人があとがきで「短編は苦手」と書かれていますが確かに長編の方が面白い感じ。
でも、短編は短編でまた長編とは全然違ったテイストで楽しめて、面白かったです。

盗むとき以外は不器用なスリの千秋、運動の出来ない泥棒「キャット」、人が殺せない殺し屋の明拓。このまさに「三重苦」な3人が協力して怪盗ブラックキャットとして宝石を盗み出すという話。三人とも技術としては超一流なんだけど、どこか変わっているというかなんというか。まず「スリなのに不器用」とか「泥棒なのに運動できない」なんて設定からしてかなり好み。あとは、根本的に新井素子さんの書くストーリー、キャラクター、世界観に私が惚れ込んじゃってるんで。悪役が居ても、どこか憎めない。そんな雰囲気とか世界観とか。
更にどうしようもなく文章の語り口が好きなんです。

もうちっとも本の紹介になってませんが、是非ご一読を。本当に面白いから。

話は変わって、短編の方の感想。
これ、まず読んで感じたのが「素子さんの本なのに一人称じゃない!」でした(笑)確かに主人公の一人称じゃない小説も結構あったんですよ。「チグリスとユーフラテス」とか「おしまいの日」なんかもそう。でも、それにしてもなんだか喋り言葉を聞いているような、そんな独特の文の書き方じゃないんですよね。

個人的には「チューリップ」と「でんしゃのあいちゃん」が好きだったかな。
どっちも後味的にはかなり怖い、ホラーっぽい話なのですが・・・
起こった事件自体は非常に残酷なのに、この人が書くと全然誰が悪いって雰囲気じゃなくなってしまうのです。


ブラック・キャットII ナイト・フォーク

4086107775ブラック・キャット (2)
[著]新井 素子 [表紙]石関 詠子 [絵]山崎 博海
集英社 1985-09

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ブラックキャットシリーズ第二段。
獲物が「とある超能力少年のPK」という非常に突飛な話。
でもこれ、正確に「盗んだ」って言えるのかなあ・・・
自分の物にした訳ではないから盗んだとはいえないと思うのですが。

段々警察側の人物関係も浮かび上がってきましたが
「やたらと物を壊す新人警察官」「お説教好きで犯人に逃げられる警部」って
あっちも立派に二十苦してますね。
・・・もう一人致命的なキャラが居たらキャットたちと張り合えるのに(笑)

今回は3人が3様に違うこと気にしてて、そこから大騒動に発展してしまう感じ。
特に明拓ちゃんの入れ込みっぷりはまじで笑えたのですが。お手伝いさんのカタキって。
復讐された山崎ひろふみが「お手伝いさんと一緒に居た不信人物」よりも「お手伝いさん」当人を
疑ってしまうところが、どこまでもお手伝いさんが不幸であり、コミカルであり・・・。

個人的には山崎ひろふみの今後の行動に期待がたかりますます。この人おかしすぎ(笑)